色々な作品を紙の本と併読してますが、どうしてもゆっくりと紙の本に向かう時間がないし、読みたいけど持ってない(買えない)本がすぐに読める手軽さに、最近とてもAudible率が高く…この作品もAudibleにて。

仕事して、恋愛して、そんな普通の日々が一瞬にして変わってしまう。
「彼が電車の中で盗撮した」
彼にプロポーズされたその夜に突然入った知らせ。
なぜ彼はそんなことをしたのか。
彼女の葛藤。
別れるか?別れないか?
でも昨日まで特別な存在だった彼を突然嫌いになれるわけもなく。
ただ彼を好き。
だからこそなぜそんなことをしてしまったのか知りたい。
真実を知りたい。
強くなりたい。
息子を間違った形で守ろうとする親と、彼の家族の知らなかった過去が明かされ、それぞれの心の闇が露わになっていく。
被害者ですら抱えている家族の問題。
加害者の彼と被害者との歪んだ関係。
犯罪だとわかっていても、衝動に駆られてしまう自分を必死に抑えて生きている者たちとの関わり。
「私が彼のためにできることは何か?
私だけにできることは何か?」
彼に寄り添うためのあらゆる方法を模索していく彼女の心のバランス。
それぞれの心の闇に翻弄されながら彼女はどんな答えを出すのか?
性犯罪を犯した人間への世間の目と、身近な人間の受け入れられない気持ち。
性犯罪に隠された普通の視点では見ることのできない人間模様が、フィクションながら現実として考えさせられます。
メディアが発表する表の情報と、裏に隠されている事実は必ずしも一致するとは限らないが、事実は事実として変えられるわけでもなくそこに存在する微妙な感覚と葛藤が生まれる。
メディアの過熱した報道の在り方も考えなければいけないが、それを受け取る側も冷静にならなければいけないと改めて考えさせられました。
身近な人間であればあるほど。
重くて感情的になりそうな内容でありながら、筆致はやわらかく冷静で、物語は静かに進んでいくのが不思議で、それが一穂ミチさんの世界なのかなと感じました。
ただ小説として他人事として読むだけでなく、いつ自分の身に降りかかってきてもおかしくないと自分事として捉えて読んでいくと、また違った角度で見えてくることがあるかもしれません。
応援お願いします!
気が向いたらポチッとしていただけると励みになります。
コメント