第1作目を手にしたあの日から、手話通訳士の荒井尚人と、その大切な家族の歩みをずっと追いかけてきました。
高杉千明さんの描く美しい表紙イラストは、いつも物語の心そのものでした。
1作目で「ここにいるよ」と手を伸ばすような幼い美和の姿から始まり、「両親」や「男(親指)」「女(小指)」の手話は、作品のテーマである「きこえる人と聞こえない人の家族の絆」を象徴しているのかなと想像します。(個人的な感想です)
作中で赤ん坊だった長女の美和が少しずつ大きくなり、妹の瞳美が生まれ、不器用ながらも必死に生きてきたひとつの家族の歴史を、私はすぐ隣で見守るように共にしてきました。
だからこそ、高校生になった美和が描かれた完結編『夢見る言葉』の表紙を見た瞬間、それだけで胸がいっぱいになり、ページをめくる手が震えるほどの深い感慨が押し寄せました。
今回、
美和が胸の前で作っているのは、特定の仕草ではなく、明確に手話の「家族」の形。
これまで登場人物たちの繊細な心の動きを映し出してきた歴代の表紙が、この最後の最後で、本物の手話の「家族」という結び目に結実しているのだと気づいたとき、じわじわと涙がこぼれそうになりました。


この物語は、決して遠い世界の「かわいそうな誰か」の美談ではありません。作中では、社会の無理解や福祉の盲点という、冷徹なマイノリティのリアルが今回も突きつけられます。
けれど、長年彼らと一緒に悩み、考えてきたからこそ、もう他人事としては読めなくて、一気に尚人たちの待つ「最後の法廷」へ引き込まれてしまいました。
読み終えたとき、『夢見る言葉』というタイトルの本当の意味が、じんわりと胸に染み渡ります。
手話や心の声という「当たり前に存在していい言葉」が、まだ社会では不十分に扱われている切なさ。
中心にいるマジョリティの都合で物事が決められていくことへの、
「私たちのことを、私たち抜きで決めないでください」
という切実な叫び。
そしていつか、誰もが自分の言葉で未来を語れるようになってほしいという、どこまでも温かい祈り。
重いテーマを扱いながらも、読み終わりにはあたたかい希望の光が心に灯ります。
この素晴らしいシリーズを最初からずっと愛してきて、本当によかった。
今を生きるすべての人に、この最高のラストを見届けてほしいです。
丸山正樹 デフ・ヴォイスシリーズ
①『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』
②『龍の耳を君に』
③『慟哭は聴こえない』
④『わたしのいないテーブルで』
⑤『夢見る言葉』


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