直木賞作品『月の満ち欠け』の著者。
最近映画を観たのをきっかけに選んでみました。
「罪を背負い、それでも生きていくということ」

『熟柿』というタイトルを見たとき、最初はどんな意味が込められているのだろうと思った。
熟した柿は甘い。
でも、その前は渋く、簡単には食べられない。
時間をかけて熟すことで、ようやく甘みを増していく。
その姿は、この物語そのものを表しているように感じた。
主人公は、刑務所での出産、子どもとの別れ、離婚という過酷な過去を抱えながら生きている。
母として子どもを想う気持ちは変わらない一方で、社会は前科のある人に簡単には居場所を与えてくれない。
それでも、この作品は「罪を犯した人」を一面的に描かない。
罪を償うことの重さ、人との出会いが少しずつ人生を動かしていくこと、そして何より、母としての愛情を静かに、丁寧に描いている。
読みながら何度も考えたのは、
「人は過去だけで判断されるべきなのか」ということだった。
犯した罪は消えない。
でも、だからといって、その人の人生まで止まってしまっていいのだろうか。
派手な展開がある作品ではない。
それでもページをめくるたびに、人の弱さや温かさが少しずつ胸に積み重なっていく。
『熟柿』というタイトルには、時間をかけて渋さが甘さへと変わる柿のように、人もまた傷や後悔を抱えながら、それでも生き続けることで少しずつ変わっていけるという願いが込められているように思えた。
読み終えたあとも、すぐには本を閉じられない。静かな余韻が長く心に残る一冊だった。
『熟柿』というタイトルが最後に深く胸へ響きました。
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